豊かな自然に囲まれたこの場所に、
連日地域の人々が笑顔で訪れる小さなお店があります。
ソフトクリームとドーナツの専門店「FLOOMY(フルーミー)」
手がけるのは、「渋川飯塚ファーム」を営む飯塚さんご夫婦です。今でこそ街に開かれた人気店を運営するお二人ですが、ここへ至るまでの14年間には、数々の予期せぬ挫折と、そこから生まれた「人とのつながり」のストーリーがありました。
会社員からの転身。
すべてを失った畑で見つけた「一筋の光」
元々は普通の会社員として、全国を飛び回る転勤族だった夫・飯塚さんと、専業主婦としてワンオペ育児に孤独を抱えていた妻。そんな二人の転機となったのは、大切な家族との突然の別れでした。
「人生で、自分は何を残せるのだろう」
その問いを胸に、地に足をつけた暮らしを求めて2012年4月、夫の実家がある北群馬渋川エリアへと戻り、未経験からの農業をスタートさせました。
しかし、現実は甘くありませんでした。最初に借りた畑の土壌障害により、周囲から期待され取材まで受けていたネギやブロッコリーなどの野菜が、一瞬にしてすべて全滅してしまったのです。
途方に暮れるご夫婦。そんな絶望のどん底にあった畑の片隅で、なぜか青々と力強く生き残っていた植物がありました。それこそが、妻が趣味でベランダから持ってきた、「ハーブ」だったのです。

雑草のように強いハーブ。この偶然の生命力が、現在の彼らの歩みを決定づけることになります。

自宅のキッチンから始まった、ジャムとアイスの挑戦
”最初は直売所にハーブを並べることから始まりました。しかし、それだけでは生計は立ちません。そこで2人目の子どもの育児の合間を縫って、妻が自宅のキッチンで作り始めたのが、地元の果物とハーブを合わせた「ジャム」でした”
手作りのジャムをブログに綴っていたところ、そのこだわりが伊香保温泉の関係者の目に留まり、旅館での販売へ。そこからイベント出展、百貨店や高崎駅ビルへのテナント出店へと、事業は一気に拡大していきました。
「ピンチの裏には、いつも新しい出会いがあるんです」
そう振り返るように、テナント撤退と同時に、かねてより縁のあった長野原町の牛乳屋さん「豊田乳業」の豊田さんとの共同プロジェクトが始動。アイスクリーム工場を作り、新規事業として「カップアイス」の製造・卸へと舵を切りました。


母親の一言から生まれた、誰もが気負わず入れる場所
卸販売が軌道に乗る一方で、ご夫婦の胸には「やっぱり、自分たちの想いを直接届けられる、街のメディアのような小さなお店をもう一度開きたい」という熱い想いが再燃していました。
当初はジェラート屋を計画していましたが、奥様の頭にはひとつの引っかかりがありました。「尖ったおしゃれなお店ではなく、もっと日常に溶け込む、お年寄りから子どもまで愛される王道のお店にしたい
世の中の「普通」をよく知る自身のお母様に「ジェラート屋さんとソフトクリーム屋さん、どっちに入りたい?」と尋ねたところ、返ってきたのは「ソフトクリーム」という即答でした。
「それだ」と確信したご夫婦は、急遽ソフトクリーム専門店への大転換を決意します。
こうして生まれた「FLOOMY」のソフトクリームは、一般的なものとは一線を画します。群馬県産の牛乳を贅沢に使い、完全にオリジナル配合でブレンド。自社の自家製ジャムをかけて食べることを前提にしているため、甘さはすっきり、脂肪分も控えめです。
さらに、看板メニューとしてひらめいた「ドーナツ」は、奥様が開発したもの。小学生でもお小遣いで買える価格にこだわり、驚くほど軽くて何個でも食べられる、優しい味に仕上げました。
「ここのドーナツなら毎日でも食べられる」と、近所のおじいちゃんやおばあちゃんが嬉しそうに買っていきます。お店のイメージカラーであるレモンイエローのように、温かく誰も拒まない空間には、いつも穏やかな空気が流れています。

渋川の街に、夢のあるループを
「起業するなら、絶対に儲けようとするな。取引先と腹が立つことがあっても、自分が負けなさい」
奥様が結婚前に勤めていた会社の会長から授かり、今でも頑なに守り続けている教えです。目先の利益ではなく、相手に喜んでもらうこと。その心の余白が、数々の温かい「縁」を手繰り寄せてきました。

この地域になくてはならない、街の誇りとなる会社にしたいんです。小さい頃にFLOOMYでドーナツやアイスを食べた地元の近所の子どもたちが、大きくなったときに『あのお店で働きたい』って帰ってきてくれるような、そんな夢のある温かいループをこの街に作っていきたいですね。
絶望の畑でハーブが芽吹いたあの日から14年。ご夫婦が紡いできた小さくて強い輪は、これからも渋川の街を、レモンイエローの優しい光で照らし続けます。

FLOOMY(フルーミー)
群馬県産牛乳をたっぷり使った自家製ソフトクリームとドーナツの店
群馬県渋川市川島434-9
0279-41-9050
10:00~18:00(金曜定休)

