空き家を、人が集まる「目的地」へ。伊勢崎の若き起業家が挑む、新しいローカルの宿泊と働き方


活用されていなかった空き家が、今では国内外の旅行者が集まる宿になっている。製造業が盛んなこの街の一角に、ひっそりと、しかし確かな活気を持って佇む場所がある。2年間放置されていた空き家を自らの手でリノベーションし、民泊として蘇らせた『Apartment Hotel by Isesaki』

運営するのは、株式会社レマワークスの代表を務める28歳の若き起業家だ。大手の営業マンを経て、世界20カ国を旅し、地元群馬へと戻ってきた彼が描くのは、ただの宿泊施設づくりではない。地方の空き家問題への挑戦であり、そこに暮らす人や働く仲間たちの「新しい働き方」の実験場だった。

インタビューに受け答えする株式会社Lema Works 代表 新井さん

この場所が「ホテル」に生まれ変わる前、そこには2年間放置された空き家が眠っていた。しかし、オーナーにとってそれは「問題」ではなく、鮮やかな「チャンス」に映ったという。

“向かいの家が、自分の高校の同級生の実家だったんです。遊びに行ったときにここが空き家で、『壊す』という話を聞いて、『ちょっと待てよ』と。その日のうちに親御さんに挨拶して、『こういうことをやりたい』って話したら『面白そうだね』と受け入れてくれて。地方で戦うと決めていたし、誰もやっていないからこそチャンスだと思いました。”

内装の壁紙張り替えなども、できる部分は自分たちの手でDIYで行い、初期投資を徹底的に抑えた。伊勢崎周辺には競合となる民泊がほとんどない中、Booking.comやAirbnbを通じて、海外からのインバウンド客が途切れることなくやってくる。平日は外仕事などのビジネス・法人利用、休日は海外からの観光客。1泊1人あたり約6,300円という高いコストパフォーマンスは、これまでの群馬の宿泊シーンにはなかった新しい選択肢を生み出している。

“伊香保温泉のような観光地に行かなくても、伊勢崎のここに泊まって、街で食事をしたり体験したりしてお金を落としてくれる。これまでなかった流れが確実に生まれています。正直、誰もやっていないから最初は怖かったけど、やってみないと分からないことばかりです。”

経営しているアパートの紹介

現在に至るまで、彼のキャリアは一筋縄ではいかない。太田市で生まれ育ち、東洋大学で会計を学んだ後、大手メーカーの内定を3月の懇親会の夜に辞退。東京のベンチャーでのインターンを経て、某大手IT・人材サービスで営業マンとして走り抜けた。しかし、束の間コロナ禍がすべてを狂わせた。1年目から担当担当顧客の半分以上が営業停止していく現実。理不尽な状況を目の当たりにし、座っている椅子が違うという違和感を抱いたという。さらに母親の体調悪化も重なり、6人兄弟の家族を支えるため群馬へ戻り、大学職員として3年間、広報やSNS集客に奔走した。

安定した職員の立場を離れ、次に彼が選んだのは「世界」だった。

“高校の副担任の先生がタイで駐在員をしていて、『会いに行こう』と思ったのが初めての海外でした。そこからアメリカ、インド、東南アジアなど約20カ国を1人で旅しました。ノマド的にWebの仕事をしながら回っていたんですが、収支は全然合わなくて(笑)。でも、東南アジアのローカルで人間が助け合って生きる姿を見て、資本主義の価値観だけがすべてじゃないって気づいたんです。”

「仕事だけに縛られず、自分らしい生き方を大切にする」。海外で得たその哲学は、今の経営スタイルに色濃く反映されている。

「いろんなことやってんじゃねえよと思われるかもしれないけど、やりたいことはやっていく」と笑う彼が、何よりも大切にしているのは、一緒に働くメンバーやアルバイトの待遇、そして「これまでにない働き方」の実現していく。

“自分だけが儲けて裕福になるのではなく、一緒に働いてくれるメンバーの給与や待遇はしっかり上げていきたい。自分が家族にしてもらったことや、海外の先生にしてもらったように、今度は下の世代の背中を押して、応援したいんです。人の幸せを願うのは本当に好きですね。Web事業、民泊、そして9月から始まるキッチンカー事業。マルチに事業を展開するのは、ただ手広くやりたいからではない。個人のスキルを活かし、場所に縛られずに生きる選択肢を、地元・群馬の若者たちに示したいと考えている。


活動として、伊勢崎商業高校の3年生と授業を行っており、学校の文化祭で使用する動画を生徒たちと一緒に制作している。

東京での圧倒的な修羅場——朝から晩までの営業の日々——を経験したからこそ、今のタフさとスピード感がある。だからこそ、東京でくすぶっている若者たちへのメッセージには熱がこもる。

熱い想いを語るLema Works 代表 新井さん


“東京での経験は今の自分の大きな糧になっています。でも、地方には地方の良さがある。行き急がずに、自分のタイミングで故郷に還元するのもすごくいい。
もし戻ってきてやりたいことがあるなら、絶対にやったほうがいい。怖いけど、一歩踏み出さないと何も始まらないですから。”

空き家問題という地方の深刻な課題を、独自のセンスと行動力で「人が集まるアパートメントホテル」へと変えていく。若き起業家が踏み出した小さな一歩が、群馬の未来に大きな変化を生み出します。


新井優
株式会社Lema Works 代表取締役

株式会社レマワークス 代表。群馬県太田市出身。会計学の専攻を通じてビジネスの基礎数値を学び、在学中にベンチャー企業で現場実務を経験。その後、大手Webメディア・人材事業会社に入社。コロナ禍での営業経験や母の体調変化を機に群馬へUターン。地元の大学職員として3年間広報・SNS集客に奔走した後、約20カ国のバックパッカー旅を経て独立。現在はWeb事業、民泊運営、キッチンカー事業を手がけながら「人生を第一に生きる」を体現している。

Apartment Hotel by Isesaki
群馬県伊勢崎市
アパートメントホテル(民泊)

Booking.com / Airbnb にて予約受付中
宿泊者からの評価も高く、各予約サイトで高い評価を獲得
IG isesaki_stay
群馬県や埼玉県北部を中心に、活用されていない空き家や空室の相談を受け付けている
問い合わせはInstagramのDMへ